
ゲレンデのルールは、ほとんどが車の運転に置き換えられます。知らないまま滑るのは、交通ルールを知らないまま運転するのと同じです。
私が12年滑って見てきた、危ない場面と対策を、国際スキー連盟(FIS)の10か条の順に、運転に例えて解説します。
💡 この記事でわかること
✅ 10か条を、ゲレンデと車の運転で並べた対応表
✅ 急に止まる・並走・滑り出しなど、初心者がやりがちな危ない行動と私の対策
✅ コースを歩く危険と、看板が伝わりにくい理由
✅ 実際に見た光景から考える、身分証のコピーを持つ理由
🌐 10か条を、車の運転に置き換えると

FIS(国際スキー連盟)が定めている、スキーヤーとスノーボーダーの行動規範は、10か条あります。
実はこの10か条は、ほとんどが車の運転に置き換えられます。次の表は、10か条を、ゲレンデで起きることと、車の運転で言えば何にあたるかを並べたものです。左から、ルールの番号と内容、ゲレンデでの行動、車の運転での同じ行動です。
| ルール | ゲレンデ | 車の運転 |
|---|---|---|
| 1 他者への配慮 | 人を危険にさらさない・迷惑をかけない | 他の車や歩行者に迷惑をかけない |
| 2 速度のコントロール | 急に板を横にして止まらない | 前の車が、いきなり急ブレーキを踏まない |
| 3・4 進路の選択と追い越し | 前の人が優先。並走(横に並んで滑ること)したら譲る | 後ろの車が車間距離を空ける。並んだら無理に前へ出ない |
| 5 滑り出す前の確認 | 滑り出す前に、必ず周りを見る | ウインカーも後方確認もなく、高速道路に合流しない |
| 6 止まる場所 | ランディング(ジャンプした人が着地する下り坂)に入らない | 高速道路を逆走しない |
| 7 コースを歩く時 | 道路を歩いていると思って歩く | 道路を歩いている人は、事故にあう危険が高い |
| 8 標識と表示 | 看板とロープを守る | 道路標識を守る |
| 9 救助 | 事故があれば助ける | 事故を見たら救護する(道路交通法に義務あり) |
| 10 身元 | 身分証のコピーを持つ | 免許証を携帯する(道路交通法に義務あり) |
ルール1は触れませんが、ルールが必要な理由は数字に出ています。次のグラフは、スキー場でケガをした人の、ケガの原因の割合です。オレンジの部分が、人との衝突です。ケガをしたスノーボーダーの約8人に1人は、原因が人との衝突でした。

📚 調べて分かったこと:ケガの原因の割合
・集計の対象は、ケガをした人(スノーボード1,669人、スキー1,191人)です。全国スキー安全対策協議会のデータで、2022/2023シーズンのものです。
・ケガの原因が「人と衝突」だったのは、スノーボードで12.3%、スキーで17.9%です。スノーボードでは、約8人に1人にあたります。
・出典:岐阜県の発表資料「スノースポーツ中の事故に注意」(令和5年12月26日)。
ルール1は、全体の原則なので、ここでは触れません。ルール2から順に、私が見てきた場面を書きます。
🚦 ルール2|急に止まらない(前の車がいきなり急ブレーキを踏む)

ルール2は、自分の技量や、地形、雪、混雑に合わせて、制御できる速さで滑ることです。
初心者が最初に覚える止まり方は、サイドスリップ(板を斜面に対して横向きにして、板の縁(エッジ)でブレーキを掛けながら降りていく滑り方)です。基本の技ですが、使い方に注意があります。
いきなり板を横にすると、急ブレーキを掛けたような状態になります。後ろから滑ってくる人から見ると、前の人が急に止まるので、ぶつかりそうになって危険です。
車の運転で言えば、前を走る車がいきなり急ブレーキを踏むのと同じです。後ろの車は、避けきれません。
始めは難しいですが、少しずつ板を横向きにするほうが安全です。この止まり方は、後ろを滑っている人に「今から止まりますよ」と知らせる合図にもなります。車でいえば、ブレーキを軽く踏んで、ブレーキランプで後ろの車に知らせるのと同じです。急に止まらないことを、意識してください。
急に止まるだけでなく、急に進路を変えること(急な方向転換)も、同じように危険です。後ろから滑ってくる人は、どちらへ動くのか分からず、避けられません。車の運転で言えば、急ハンドルを切るのと同じです。急な方向転換も、しないでください。
🤝 ルール3・4|前の人が優先、並走したら譲る

ルール3は、後ろから来る人が、前の人を危険にさらさない進路を選ぶこと。ルール4は、追い越す時に、相手が動いても大丈夫な余裕を空けることです。
これは、スキー場の一般的なルールで、前を滑っている人が優先です。私は、そのルールに沿って、相手が明確に先を滑っている時は、邪魔にならないラインを選んで滑っています。邪魔にならないラインとは、明らかにこちらには来ないと思われるラインです。
初心者のうちは、自分が先を滑っていても、他の人に抜かれる場面が何度もあると思います。その頃は、前方の視界に入っている人に気を遣う感じでよいです。
一番微妙で難しいのは、並走になった時です。一度スピードを落として、相手に進路を譲ってください。
テンションが上がっていると、譲るのは難しいですよね。でも、ここは冷静に譲る判断をしてください。譲れば、余計なトラブルを避けられます。結果として、儲けたと思えばいいです。
危険なのは、相手だけではありません。自分も怪我をするおそれがあります。怪我をすれば、せっかく来たのに、そこで滑るのが終わってしまいます。最悪の場合は、大怪我や死亡事故も考えられます。
車の運転でも、同じ考え方です。後ろの車は、前の車が急に止まっても追突しないよう、車間距離を空けておく決まりです。追い越す時も、追い越す側が前の車と周りの車に注意して、安全に追い越すことになっています。隣の車線に並んだら、無理に前へ出ず、速度を落として譲るほうが安全です。リスク回避は、上級者への第一歩だと思ってください。
👀 ルール5|滑り出す前に、必ず周りを見る

ルール5は、コースに入る時や、止まった後に滑り出す時は、上下を見て確認する、というルールです。
ところが、これを守っていない人を、ちょくちょく見かけます。思っているより、かなり危ない行動です。
高速道路に乗る時に、ウインカーも出さず、後方も確認せずに、車線を変えて合流するのと同じくらい危ない行為です。必ず、滑り出す前に周囲の状況を確認してから滑り出してください。
⛔ ルール6|止まる場所(ランディングに入るのは、高速道路の逆走)

ルール6は、やむを得ない場合を除き、狭い場所や見通しの悪い場所で、コース上に止まらない、というルールです。
ここは、板流し(置いた板が、勝手に斜面を滑っていくこと)と、休む場所の選び方まで含めて、別の記事に詳しく書きました。
ここでは一言だけ。ジャンプ台の着地点(ランディング)に入ってしまうのは、車で言えば、高速道路に逆走で入ってしまったようなものです。知らなかったでは済まされません。
🚶 ルール7|コースを歩く時は、道路を歩いていると思って

ルール7は、コースを歩いて登り下りする時は、コースの端を歩く、というルールです。
やむを得ず歩く場合は、仕方ないと思います。でも、あくまで、道路を歩いていると思ってください。
あなたが歩いていることを、滑っている全員が知っているわけではありません。事故にあう危険性を、著しく上げている状態です。
🪧 ルール8|看板と表示は、伝わらないことがある

ルール8は、すべての標識と表示を守る、というルールです。
でも正直、これは難しい面が度々あります。スキー場が、詳しく書いていないことも度々あります。
例えば、「ここでスノーボードを装着しないでください」と呼びかけているスキー場があります。それなら、装着できる場所を、大きい絵などで明確に示さないと伝わりません。結局、みんなそこで装着しているから私も装着する、という状態になります。全員が、その看板を見ているわけでもありません。
車の運転で言えば、標識が小さくて見落としやすい道路を走っているようなものです。
一方、ロープや立入禁止の表示は、比較的分かりやすいです。そのエリアへの侵入は、控えましょう。
🆘 ルール9・10|助ける、そして身元

ルール9は、事故があれば助ける義務がある、というルールです。できる範囲で、やってもらえると助かります。
ルール10は、事故の後に、名前と住所を交換する、というルールです。
ここで、私が実際に見た光景を書きます。意識なく倒れているスノーボーダーに、係員が電気ショックで蘇生を行っている場面を、目にしたことがあります。何が起きたのかは、分かりません。
意識が戻っても、自分の住所や連絡先を答えられる状態とは限りません。もし連絡先が分からなければ、連絡の取りようがありません。
危険を伴うスポーツ(遊び)をしているという認識を、常に持ってください。身分証のコピーなどを、リフト券入れや財布に入れておくことをおすすめします。
車の運転でも、免許証の携帯が義務になっています。
📚 調べて分かったこと:車の運転のルールでは

・道路交通法 第72条:交通事故があった時、運転者などは、直ちに運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止するなど、必要な措置を講じなければならない。
・道路交通法 第95条:免許を受けた者は、自動車などを運転する時は、免許証を携帯していなければならない。
ゲレンデで身分証のコピーを持つことは、私が自分で決めている習慣です。
❓ よくある質問
Q. まず、どのルールから守ればいいですか?
A. まず守ってほしいのは、ルール5の「滑り出す前に周りを見る」ことです。道具も技術もいらず、今日からすぐにできるからです。
Q. 身分証のコピーは、どこに入れておけばいいですか?
A. リフト券入れか、財布に入れておくのがおすすめです。ゲレンデでいつも身につけている物に入れておけば、万が一の時に見つけてもらいやすいと考えています。
Q. ゲレンデの10か条は、法律ですか?
A. 法律ではありません。国際スキー連盟が定めた、スキーヤーとスノーボーダーの行動規範です。ただ、ルール3と同じ考え方は、スキー場の衝突事故についての最高裁の判決(平成7年3月10日)にも出てきます。上から滑る人は、前を見て、下の人にぶつからないよう速度と進路を選ぶ義務がある、という内容です。
Q. このルールは、スキーとスノーボードで違いますか?
A. 同じです。国際スキー連盟の10か条は、スキーヤーとスノーボーダーの両方に向けた決まりです。日本では、全国スキー安全対策協議会の「スノースポーツ安全基準」も、基本のルールとされています。
Q. 家族や友人にスノボを教える時、ルールはどう伝えればいいですか?
A. 一緒に滑りながら、その場で教えていくのがいいと思います。スキー場へ向かう道中に、軽く説明しておくのもおすすめです。あくまで私の考えです。
📝 まとめ
ゲレンデのルールも、道路の交通ルールも、どちらも、事故や怪我が起きないようにするためのルールです。
ルールは、自分を縛るためのものではなく、自分と相手を守るためのものです。
車の運転では、ルールを知らないままハンドルを握ることはありません。ゲレンデも同じで、知らなかったでは済まされません。
次にゲレンデへ行く前に、この10か条をもう一度だけ見返してください。知っているだけで、危ない場面に気づきやすくなります。

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