
スノボの板は、平らに見える場所でも流れます。流れた板はどこへ行くか誰にも分からず、小さな子供のいる場所へ向かうこともあります。
私はこれまで一度も板を流したことがありません。守っているのは、片足のバインディング(板に足を固定する金具)は付けたままにすることと、両足を外す時は板をひっくり返して斜面に対して横向きに置くことの2つだけです。
💡 この記事でわかること
✅ ゆるやかな斜面で、流れ始めた板が10秒でどれくらいの速さになるか(計算値)
✅ 板を流さないための、私の2つの習慣と、それが理に適っている理由
✅ 流れ止め(リーシュコード)の付け方と、付ける・付けないの考え方
✅ ゲレンデで休む場所の選び方と、国際スキー連盟(FIS)のルールとの比較
😱 置いた板が、勝手に子供のほうへ滑っていく

斜面に置いた板が、持ち主の手を離れて、勝手に滑っていくこと。これを「板流し」と呼びます。
流れた板は、どこへ行くか誰にも分かりません。小さな子供がいる場所へ流れていく可能性も、十分にあります。
少し傾いた駐車場で、手を離したショッピングカートが勝手に動き出すのと同じです。
初心者の多くは、これを知りません。交通ルールを知らないのに車を運転するのに近い、とても危険な状態です。
🔢 スノボの板は、ゆるやかな斜面でも10秒で自転車並みの速さになる

平らだと思って置いた板でも、動き出します。では、流れ始めた板は、どれくらいの速さになるのか。傾きごとに計算してみました。
前提は、板と雪の間の摩擦係数(すべりにくさを表す数字)を0.1としたことです。論文で報告されているスノーボードの摩擦係数は0.026〜0.143で、0.1はその中でやや滑りにくい側の、控えめな見積もりです。空気抵抗は考えていません。実測ではなく、私の計算値です。
次に数字の表を見せますが、正直、細かい数字は見なくていいです。言いたいことは1つだけです。

つまり、10°のゆるやかな斜面でも、流れ始めた板は10秒後に時速27km、約37m先まで進みます。自転車で走るくらいの速さです。
✅ 私が板を一度も流していない、2つの習慣
私は、これまで一度も板を流したことがありません。危険を知っていて、次の2つを必ず守っているからです。
① 片足は、バインディングに付けたままにする

バインディングは、板に足を固定する金具です。板から降りる時も、片足はバインディングにしっかり付けたままにします。ゆるゆるではなく、しっかり装着しておきます。
② 両足を外す時は、板をひっくり返して、斜面に対して横向きに置く

どうしても両足を外す時は、必ず板をひっくり返して、斜面に対して横向きに置きます。平らだと思っていても、必ずです。
💡 この2つが理に適っている理由
①片足が板につながっている限り、板は自分の足から離れていきません。
②板が滑るのは、ワックスを塗った裏側(ベース)です。ひっくり返すと、滑る面が上を向きます。さらに斜面に対して横向きに置けば、板の長い向きと斜面の下る向きが直角になり、滑り出しにくくなります。これは私の理解で、実験で確かめたわけではありません。
ただし、強風で板が動くことがあります。板をひっくり返しただけ、斜面に対して横向きに置いただけでは、危険な場合があります。板をひっくり返す ✕ 板を斜面に対して横向きに置く、この2つを掛け合わせて置いてください。
理由は、強風が板を押すと、置き方だけでは止まりきらないことがあるからです。置き方に「雪に埋める」を足せば、板が動き出すきっかけを、もう1つ減らせます。ここも私の理解で、実験で確かめたわけではありません。
安全に関することなので、念には念を入れて丁度良いと思います。

さらに不安なら、アイスバーン(氷のような雪面)でない場合に限り、バインディングを雪に埋めるように、グッグッと押し付けてください。
理由は、バインディングが雪に埋まると、雪が引っかかって、板が滑り出しにくくなるからです。ぬかるみに靴がはまると、足が抜けにくいのと同じです。アイスバーンは硬くて埋まらないので、この方法は使えません。これは私の理解で、実験で確かめたわけではありません。
アイスバーンしかない場所では、次の2つを守ってください。
①止まる場所は、アイスバーン以外を選ぶ。
②アイスバーンしかなかったら、板(バインディング)を持ったままにして、絶対に手を離さない。
楽をして、板を何かに引っ掛けておくのも禁止です。引っ掛けても外れて、そのまま流れていくからです。
この作業は、始めのうちは意識して慣れる必要があります。慣れてくると、そこまで意識しなくても、自然とできるようになってきます。
声を大にして言いたいのは、この2つは必ず守ってほしいということです。
流れ止め(リーシュコード)は、付けないといけない?

💡 流れ止めは、結局どうすればいいの?
安全に行きたいなら、初めのうちは流れ止めを付けましょう。
慣れてきたら、気をつける前提で付けなくてもいいですが、何かあっても私は責任を取れません。
流れ止めは、板と自分の足をつなぐ紐(コード)です。サーフィンのリーシュコードと同じ役目で、板が足から離れて流れていくのを防ぎます。

万が一板が流れても、足に付けたコードで止まるようにするのが、流れ止めです。ただし、あくまで補助です。流れ止めに頼らないでください。
滑る時は、ブーツとバインディングをしっかり固定します。滑らない時は、板本体かバインディングをしっかり持って、絶対に手を離さないでください。

私の経験から、使う前に、コードを必ず点検してください。私は昔、サーフィンで傷んだリーシュコードを使っていて、波に巻かれた衝撃でコードが切れました。板だけが岸に流され、私だけが海に取り残されて、本当に死にそうになりました。スノーボードの場合は、このようなことはありません。ただ、それくらい危険なことだという認識を持ってください。
流れ止めの付け方

流れ止めは、コードの片方の端を板のバインディングに付け、反対側の端(ベルト)を前足のふくらはぎに付けます。この両方を付けて、初めて板と足がつながります。
知らない人には、何に使うか分からない、ただの紐です。昔、レンタルの板(ブーツとバインディングが付いた板)を借りた初心者が、板を脇に抱えて歩きながら、流れ止めのベルトを足に付けず、地面に引きずっている光景を見たことがあります。バインディング側にコードが付いたまま、反対側が雪の上に引きずられていました。
ベルトを足に巻かないと、板が流れた時に、足とつながっていないので、止まってくれません。

両足をバインディングから外しても、コードは板のバインディングと前足のふくらはぎにつながったままなので、板は離れません。ただ、トイレなどで板を置いて離れる時は、ふくらはぎのコードも外すので、足と板はつながらなくなり、流れ止めの意味はなくなります。
その時は、板をしっかり持って離さず、板置きにワイヤーなどでくくり付けてください。それで、板流しを防げます。
📚 調べて分かったこと(私の体験ではありません)

スノーボードの流れ止めは、前足に付けるのが一般的と紹介されています。サーフィンのリーシュコードは後ろ足に付けるという記述がありますが、スノーボードは前足です。
コードの片方の輪は、前足の膝下あたりに付けます。もう片方は、バインディングのベースプレート(足を乗せる底の板)の内側にある穴に通して付けます。
ブーツ側の付け方は、大きく3種類紹介されています。足に巻くタイプ(上の絵)は、大きな輪を前足の膝下あたりに付けます。リング型は、リングをブーツのヒモに付けます。Boa(ダイヤルでワイヤーを巻いて締めるブーツ)用は、リングの代わりに布製のフックが付いていて、丸いボタンを留め、ワイヤーを2本くらいまとめて挟みます。リングだとワイヤーを傷つけるため、とされています。リング型とBoa用は、バインディングのストラップに引っかからない位置に付けます。

ブーツ側の付け方とは別に、コードの形にも種類があります。シンプルタイプ(ナイロン製やコード状で、軽くて安価)、コイルタイプ(電話コードのように伸び縮みして、普段は短く、必要な時に伸びる)、デザイン重視タイプ(カラーやロゴ入りで、ウェアやギアに合わせて選ぶ)の3つが紹介されています。
付けてはいけない場所もあります。ストラップ(足の甲やつま先を締める、締め具合を調節する部分)と、かかと部分のヒールカップ(かかとを包む部分)です。付けると、バインディングの破損や、ハイバック(かかとの後ろに立ち上がった板)の動きに支障が出る、と紹介されています。
サーフィンは、板と足がつながっていないので、リーシュコードは必須です。スノボは、板(バインディング)と足が固定されているので、サーフィンほど必須ではありません。ただ、スキー場のルールとしては、付けることが挙げられています。バインディングのメーカーの取扱説明書にも、板を装着している間は常に使うよう書かれています(出典は下の📚)。そして、初心者は気を遣うことが多くて注意力が散らばるので、付けておけば板の管理に頭を使わずに済みます。
私は、流れ止めを付けていません。ただ、人に付けないことを勧めるつもりはありません。付けていなくて怒られている人は、私は見たことがありません。

逆に、こんな場面は見たことがあります。板を履く場所(装着エリア)で、流れ止めを付けた人が座ってスマホを見ていました。その時に板が流れそうになりましたが、コードで足とつながっていたので、途中で止まって流れずに済みました。
板を流してしまうのが怖い人は、迷わず付けてください。結果として、助かる場面は多いと思います。
私は、流れ止めの役目は、サーフィンとスノーボードで少し違うと思っています。サーフィンでは、自分と相手の両方を、ケガや事故から守るものです。スノーボードでは、相手を、ケガや事故から守るものです。自分にとっては、責任から守られる、という位置づけになります。そのため、重要性が薄く感じやすいですが、どちらも同じように重要です。これは私の考えです。
私は、前に書いた2つの習慣(片足をバインディングに付けたままにする、両足を外す時は板をひっくり返して横向きに置く)で、板を流さない対策を取れているので、流れ止めを付けていません。ですが、初心者に見られて恥ずかしい、バカにされる、と思わないでください。立派な道具です。胸を張って付けてください。私は、カッコいいと思います。
📚 調べて分かったこと(私の体験ではありません)
全国スキー安全対策協議会の「スノースポーツ安全基準」は、スキー場で守る共通のルールです。事故が起きた時に、本人とスキー場のどちらに責任があるかを判断する基準にもなります。この基準に、リーシュコード(流れ止め)を付けることが挙げられています。
白馬エスカルスキー場は、「スノーボードにはリーシュコードが必要です」としています。ルールに違反すると、リフト券が利用停止になり、退場になる場合があります。
音威富士スキー場は、規約で流れ止めを付けるよう定めています。規則に違反して損害を与えたら、賠償する決まりです。罰金の記載は、私が読んだ範囲ではありませんでした。
バインディングのメーカーであるBurton(バートン)の取扱説明書(日本語・2015年版)には、ISO規格(ISO 14573)に従って、ボードを装着している間は常にリーシュコードを使うこと、と書かれています。付け方も、前足バインディングの内側にループにして通し、反対側を体にしっかり固定する、と説明されています。
🆘 目の前で、他の人の板が流れていったら

私は自分の板を流したことはありませんが、他の人の板が流れていくのを見たことはあります。そんな時にやっていることは、次の3つです。
① まず、叫んで周りに知らせます。これまでに5回ほど、「あぶなーい!!!」と叫んだ経験があります。
② 追いつけそうなら、急いで板を履いて追いかけます。これも3回ほど、実際に回収したことがあります。
③ 板を返す時は、必ず「今回は何事もなかったけど、危ないから注意してね!」と、少し強めに言います。
本人にとっては、少し怒られてビックリすることかもしれません。それでも強めに言うのは、そのくらい言わないと気をつけてもらえないことと、本人が事の重大さを分かっていないことがほとんどだからです。
🪑 休む場所に「ここなら安全」はありません

スノボで休む時は、コースの端で。そう言われることがよくあります。
でも、これが通用しない場面があります。ある程度上達すると、山の凹凸や変化のある斜面など、地形を滑れるようになります。今まで滑れなかったエリアも滑れるようになり、スノーボードの楽しみ方が広がります。その分、無理をしてでも滑る人も出てきます。
その結果、見やすい場所で休んでいると「邪魔だ」と言われ、コース脇で休んでいると「死角になって危ない」と言われます。スノボには、ここなら安全という場所そのものがありません。
私も、斜面の真ん中で座っていた人にぶつかりそうになったことがあります。
私が座って休む時にやっていること

そもそも、私は座って休みません。休むなら、リフトの上で休めるからです。また、座らずに、板を履いたまま立って休むこともしています。よほど疲れた時だけ、座って休みます。その時にやっていることは、次の3つです。
① 上を見上げて、上から来る人から自分が見えるかを確認します。見えにくそうなら、すぐに別の場所へ移動します。
② 斜面の傾きが急に変わる場所の真下と、山の陰になる場所は避けます。見やすいコース内なら、相手が気づいて避けてくれます。でも、傾きが変わる場所の真下や影の部分は、相手が飛んでいる(空中にいる)ことが多く、相手も避けるのが難しいからです。
③ 休む場所は、コースの真ん中ではなく、比較的目立つ場所を選びます。目立つ場所とは、障害物がなく、視界が晴れている場所のことです。
ただし、濃霧(ガスが濃くて視界が悪い状態)の時は、これもあまり意味がありません。そんな時は、サイドスリップ(板を斜面に対して横向きにして、横にずらしながら少しずつ降りる滑り方)で、少しずつ降りていくのがよいかもしれません。
📚 調べて分かったこと:国際ルール(FIS)では
FIS(国際スキー連盟)が定めている、スキーヤー・スノーボーダーの行動規範は10か条あります。そのうち、この記事に関係する4つを日本語で要約しました。
・ルール3:後ろ(上)から来る人は、前(下)の人を危険にさらさないよう、進路を選ぶ。
・ルール5:コースに入る時や、止まった後に滑り出す時は、上下を見て確認する。
・ルール6:やむを得ない場合を除き、狭い場所や見通しの悪い場所で、コース上に止まらない。そこで転んだら、できるだけ早くコースから出る。
・ルール8:すべての標識と表示を守る。
私が見通しのよい場所で休むのは、ルール6の考え方と同じでした。また、ルール3により、座っている人を避ける責任は、上から滑ってくる側にもあります。ランディング(ジャンプ台の先の、着地する下り坂)のロープなどの表示は、ルール8のとおり必ず守ります。
❓ よくある質問
Q. リーシュコード(板と足をつなぐひも)は、手袋をしたままでも付けられますか?
A. 付けやすいものを選べば、手袋をしたままでも付けられます。ゴンドラを降りた後や、レストハウスから出た時など、手袋をしたまま付ける場面があるからです。大きなフックやレバーが付いた商品は、手袋をしたままでも操作しやすいと紹介されています。
Q. 完全に平らな場所なら、板を置いても流れませんか?
A. 流れにくいですが、見た目で完全に平らかを判断するのは難しいです。摩擦係数0.1で計算すると、板が動き出す傾きの目安は約6°です。ただし、雪の状態や板の状態で変わるため、「動かないはず」という前提で板を置かないでください。
Q. レンタルの板でも、気をつけることは同じですか?
A. 同じです。借りた板でも、手を離れれば同じように流れます。
⚠️ もしも、板で人にケガをさせたり、死亡させてしまったら
流れた板で人にケガをさせたり、亡くなる事故になってしまった場合、法律では、次のような責任を問われる可能性があります。どれに当たるかは、事故の状況によって変わります。
・刑事責任:過失で人にケガをさせた場合は30万円以下の罰金または科料(刑法209条)、過失で死亡させた場合は50万円以下の罰金(刑法210条)です。重大な過失があったと判断された場合は、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金になります(刑法211条)。
・民事責任:過失で他人の権利を侵害した人は、それによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。ケガの治療費だけでなく、精神的な苦痛に対する賠償(慰謝料)も含まれます(民法710条)。
私は法律の専門家ではありません。実際の事故でどうなるかは、事故の状況で変わるため、一般的な条文の紹介にとどめます。
お子さんや初心者の方に滑りを教える立場の人は、一緒に滑って、教えてあげてください。
📝 まとめ
板で滑るスポーツなので、滑る状態に板を置いていたら、少しの角度でも勝手に滑っていきます。
しかも、滑り出した板は、もう「板」というアイテムではなく、人にケガをさせる凶器に化けます。
だからこそ、守ることは3つだけです。
① 片足は、バインディングに付けたままにする。両足を外す時は、板をひっくり返して、斜面に対して横向きに置く。強風や不安がある時は、バインディングを雪に埋める。
② 他の人の板が流れていたら、まず叫んで知らせる。追いつけるなら、板を履いて追いかける。
③ 休む時は、座らない。座る時は、上から自分が見えるか、斜度が変わる場所の真下や山の影でないかを確かめる。
流れ止めは、板のバインディングと、前足のふくらはぎにつなぎます。安全に行きたいなら、初めのうちは付けましょう。慣れてきたら、気をつける前提で付けなくてもいいですが、何かあっても私は責任を取れません。
ただし、流れ止めはあくまで補助です。頼りにせず、滑る時はブーツとバインディングをしっかり固定します。滑らない時は、板かバインディングをしっかり持って、絶対に手を離さないでください。使う前には、コードの点検も忘れずに。
初めのうちは意識して慣れる必要がありますが、慣れれば自然とできるようになります。板が流れるのは、持ち主が気をつければ防げる事故です。

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